最終処分誘致検討の自治体次々と

東奥日報2006年9月17日(日)より→cache

 使用済み核燃料の再処理に伴って生じる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の最終処分候補地への応募を検討している自治体が、鹿児島県や高知県などで次々と浮上している。最終処分事業については、本県がなし崩し的に処分地化することを懸念する県民世論を背に、三村申吾知事が国などに全力で取り組むよう要請してきた経緯がある。このため電力関係者は、事業に進展がなければ、来年夏に予定されている六ケ所六ヶ所再処理工場の本格操業の支障になりかねない−として事態の推移を注視している。

 最終処分候補地の選定をめぐっては昨年、鹿児島県笠沙町滋賀県余呉町で誘致の動きがあったものの、いずれも県の賛同が得られずに断念。最終処分問題の難しさをあらためて印象付けた。

 しかし、今年八月以降、鹿児島県宇検村原子力発電環境整備機構の説明を受けていたことが明るみに出たほか、高知県東洋町が同機構の担当者を招いて勉強会を開いていたことが報道された。さらに同県津野町では、住民が町長と議会に候補地に応募するよう求める陳情書を提出した。

 鹿児島、高知両県知事とも最終処分場誘致には否定的で、先行き不透明だが、三町村の動きが、関心を寄せている他の自治体の刺激になることを電力関係者は期待する。

 電事連幹部は「韓国では中・低レベル廃棄物の処分場をめぐり、四地点が誘致を競った。日本でも、同じ時期に多く自治体が名乗りを上げれば誘致合戦になることも想定され、反対派の攻撃が一地点に集中することもない」と話す。「再処理工場受け入れ時のような、県レベルでの取り組みが不可欠になる」(青森県幹部)との見方も。

 厄介者扱いされがちな高レベル廃棄物の最終処分地に自治体が関心を寄せる背景には、三位一体改革に伴う地方交付税の大幅削減があるようだ。

 最終処分事業では、過去の地震などを調べる「文献調査」に応じただけで年間二億一千万円、地層を実際に調べる「概要調査地区」になれば、年間二十億円が地元に交付される。国は八月、文献調査に伴う交付金を年間十億円へと引き上げる方針まで打ち出した。

 「財政難で県の支援も期待できなくなった町村にとって、目の前にぶら下がったニンジンは大きい」と、ある関係者。

 最終処分問題は六ケ所再処理工場の本格操業にも影響してくる。六ケ所村には海外からの返還ガラス固化体が貯蔵されているほか、再処理工場操業に伴いガラス固化体が新たに発生するためだ。

 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき閣議決定された処分計画では、「概要調査地区」に続く「精密調査地区」を平成二十年代前半をめどに選定。この中から最終処分地を決め、平成四十年代後半に処分場を操業する予定だが、調査・手続きに要する時間を考えれば、ここ一、二年のうちに「概要調査地区」への応募がなければ間に合わない。

 電力関係者は「再処理本格操業に三村知事の了解を得るには、アクティブ試験(試運転)で大きなトラブルを起こさないことはもちろんだが、最終処分事業で何らかのプラスの材料が欲しい」と話している。