資源エネ庁:高レベル廃棄物、英国と「交換」して返還

毎日新聞 2006年5月22日 19時50分→cache

 経済産業省資源エネルギー庁は22日、英国から13年度以降に返還される低レベル放射性廃棄物の代わりに、同じ放射能量の高レベル放射性廃棄物を受け入れる方針を決めた。英国側が提案していたもので、同庁は体積が少なくなるため輸送や貯蔵、処分費が大きく減り、経済的メリットが大きいと判断した。ただ、高レベル放射性廃棄物は国内でも処分地が未定で、「国民の理解や協力を得る必要がある」としている。

 エネ庁が22日の総合資源エネルギー調査会の小委員会で示し、了承された。

 各電力会社は原発の使用済み核燃料の再処理を98年まで英仏に委託しており、そこで生じた廃棄物が返還の対象となっている。英国からは高レベル廃棄物を閉じ込めたガラス固化体850本に加え、超ウラン元素(TRU)を含む低レベル廃棄物1万2000立方メートルが返還される予定だ。

 英国の提案は低レベル廃棄物の代わりに150本のガラス固化体を返還するというもの。日本に持ち込まれる「ガラス固化体」は結果的に計1000本となる。

 この廃棄物の交換が実施されると、海上輸送は37回から1回に減り、貯蔵、処分費用も含めると約2950億円が減額される。英国に支払う交換手数料を考えても、日本にとっては約2350億円が節約されるという。

 ガラス固化体は核分裂生成物を、ガラスと一緒にステンレス容器に詰めたもの。核分裂生成物は強い放射線を出すことから「死の灰」と呼ばれ、10万年以上の管理が必要とされる。人が近づくと数秒で致死量の放射線を浴びる。

 日本では、このガラス固化体を地下300メートル以上の場所に埋める(地層処分)予定で、現在、候補地を公募している。

 TRU廃棄物にも放射能半減期が長い放射性物質が含まれるが、大半は強い放射線や熱を出さない低レベル廃棄物だ。

 またエネ庁は同日、TRU廃棄物の一部をガラス固化体の近くに埋め立て処分できるよう制度を見直す方針も示した。【中村牧生】

毎日新聞 2006年5月22日 19時50分